第1章

そんなダメな俺は村上龍昭和歌謡なんちゃらという本を持って、街の離れのバス停に向かったのさ。どうしてかは分からないが、そうしなければならなかった気がするのさ。
やがてバスが来たのさ。表面が所々錆びたバスに乗ると、そこには初老に近いであろう運転手しか姿は無かった。俺は運ちゃんに言った。「この世のはてまで」
運ちゃんはこっちを見ずに、黙って行き先の表をかしゃかしゃと換えはじめた。
「この世の果てはあんちゃんにしか見えねえだろう、だがな、この世の果ての向こうはあんちゃんが切り開いていかなきゃなんねえのさ」
気が付くとオレはバスなんかには乗っておらず、ただこたつの中で居眠りをしていただけだった。ぐっしょりと服の中でまとわりつく寝汗が気持ち悪い。


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