ぼくらの

maidentity2005-02-08

私に向かって、手を振るものがあった。それは小さく、まるで人形のようだったがたしかに生きていて、よく見ればそれがまだ幼い少女だと言う事が分かる。歳にして、4、5才だろうか。
「バイバイ」
と、私も手を振った。この世に純粋な存在が許されているのなら、間違いなく挙がるであろう笑みを浮かべて、彼女は母親と思われる人物のもとへ去って行った。場所は私のバイト先。正午を過ぎて客足も一旦落ちついた頃の安らぐ出来事だった。
「かわいいね」
横でレジ打ちをしていたメガネ女史が言う。私もそうですね、と相槌をうった。
「僕もあんな娘が欲しいなあ」
ここであらかじめ言っておくが、私は決してやましい気持ちで上の発言をした訳ではない。たしかに聞きようによっては―昨今の社会や事件を見る限り―実に「妖しい」台詞に聞こえてもおかしくは無い。僕の性癖―或いはホームページや同人活動―を知る者なら尚更であろう。長々と弁明したが、「あんな娘が欲しい」というのは略奪ではなく、結婚して性交して我が子を欲したと言う事だ。
などと書いているとなんだか虚しくなったのでここらでやめておこう。それに、閲覧者の皆さんは解っておられる筈だ。私がいかに紳士で、ジェントルマンで、ナイスガイのムッシュである事を。
だが横にいた私の同僚はそう思わなかったようだ。メガネ女史は怪訝な顔をし、私に毒を吐いた。
「しんいち君、なんかやらしいよ」
なんと言う事だろう、彼女とはバイトの同僚として5年以上もの月日を共にしていたのだが、まさかそのような発言をするだなんて、心外である、と先の文章を噛み砕いた反論をした。しかし、レジの向こうにいた苺子までも私に言葉の刃を向けたのである。
「卑猥ですわ。あなたが言うと余計に」
違うのだ、娘が欲しいというのはこう、純粋に自分の子をだな、と言うが2人は。
「いや、それもなんかやらしいよ」
などと。


「バイバイ」
ドラえもんの声真似をした。しかしなにもおこらなかった。