某スレにて
ちょっといい話。
■名無しさん@お腹いっぱい。 05/02/22 22:20:47
初めて手にしたRPG・・・それはドラクエでもなく、FFでもなく、
ファミコン版ウィズⅠだった。
当時、小学一年生の俺は、マリオを1〜2面辺りウロチョロしては
ゲームオーバー、数回繰り返して1時間、そこで親に止められる。その程度のTVゲーマーだった。
しかし、ある日、4歳年上の幼馴染が、見慣れない真っ黒なカセットを持って、家にやってきた。
それがウィズだった。
「これ、おもろいで〜」
と、その幼馴染が愛読したであろう、ボロボロの攻略本をセットに、俺の元へウィズを置いていったのだ。
ただ、幼馴染は一つだけ言い残した。
「ええか、何があってもプレイ中にリセットしたらあかんぞ。ファミコンが壊れるっ」
俺はRPGの概念をまったく知らなかったため、その時は、
「そんな危険なゲームなんか〜。こわいな〜」
と、純朴に受け取り、まさかその誤った知識が、後々に大悲劇を起こそうとは知る由もなかった・・・。
■名無しさん@お腹いっぱい。 05/02/22 22:32:38
不良学生が後輩に、エロ本や煙草を教える、そんなワルの遊びの雰囲気を、当時の俺はウィズから感じた。
「おこられるかな〜」
と親を恐れつつも、夕方4時半くらい、雨の日に、俺はファミコンにそれを挿した・・・。
初めは何一つ分からなかった。
幼馴染の残したキャラ(後できいたところ、レベル13ちょいくらいだった)を、
四苦八苦して、ようやく酒場でPTを組むという行為を覚え、
訓練所に入って、編成したPTが全部消え、
ようやくPTを組んだままダンジョンに潜ってみれば、
不気味な音楽に、茶色(だったかな?)の壁、壁、壁・・・。
ぶつかれば、「いて!」「いて!」と何かが悲鳴をあげている。
扉の前でとりあえずAボタンを押すと、「バカ〜ン!」と炸裂音と共に、
突然、音楽が切り替わって、化け物が飛び出てくる。
まずここで泣いた。
あまりの不気味さと恐怖と、未知の快感故に、震えて泣いた。
ここから、ようやく小学一年生の、試練場の旅が始まった・・・。
■名無しさん@お腹いっぱい。 05/02/22 22:42:20
当時、自分の部屋がなかった俺は、親が働きに行ったことを確認して、
窓を閉め、鍵を閉め、それからようやくウィズをプレイし出した。
訓練所でキャラメイクする。
酒場で組む。
ダンジョンに潜る。
その一連の動作を何とか覚え、ようやく冒険に出てみよう、というところまでこぎつけ、
攻略本にある、「ボーナスポイントを粘ったほうがいい」のアドバイスを無視して、
一人一人、計六人分、丁寧に名前をつけて、心を込めてキャラメイクした。
(職業はもう忘れてしまった・・・)
幼馴染の「しんちゃん」
近所の悪友「たかくん」
ウィズを教えてくれた「「まなぶっち」
従姉妹の「のりちゃん」
その弟の「けんちゃん」
そして・・・恋とは呼べないが、ひそかに憧れていた、ハーフの同級生、
「おがわさん」
その6人PTで、俺の長い旅は始まった・・・。
■名無しさん@お腹いっぱい。 05/02/22 22:55:09
鬱陶しい梅雨が終わり、夏が終わり、雪が降り積もる季節を過ぎ行きながら、
地下一階
地下二階
地下三階・・・・次々と迷宮を制覇していった。
途中、何度も「たかくん」が死んだ。
そのたび、寺院に運んでは、祈って、詠唱して、念じて、なんとか復活できた。
ほかのみんなはちょこちょこ死んだけど、無事生き返ったし、
一番嬉しかったのは、一番後ろの「おがわさん」だけが、一回も死ななかった。
リアルでみんなに会った時に、何か複雑な心境だった。
「みんな、冒険してるんだよ」
結局、誰にも言わなかったけど、心の中で、キャラへの愛情と、リアルへの愛情が、段々、一致してきたのを感じた。
ある日、「たかくん」がプラモデル持って遊びにきたとき、
トイレ貸したときなんか、「扉開けたら、先制攻撃で、たか君また首はねられそう」
と、ぼんやり思って苦笑いしていた。
そして、おがわさんとは、ほとんど話したことはなかったけど、
石つぶてを二人してくらって、ピットにはまって、ガスドラゴンで危うく全滅しかけて、わざと宝箱開けさせて、
そんな冒険の日を過ごしていたせいか、満足していた。
でも、とうとうたどり着いた地下10階。
悲劇が待っていた・・・。
■名無しさん@お腹いっぱい。 05/02/22 23:02:42
攻略本には危険モンスターとして載っていた、ポイズンジャイアント。
地下10階にたどり着き、扉を開けた瞬間、その大群とエンカウントした。
「勝てる! きっと勝てる!」
当時の俺は、仲間の信頼感でいっぱいだった。
コマンドを一通り入力し、「おがわさん」はあえて防御、そしてバトルスタート。
・・・しかし、ポイズンジャイアントが次々とブレスを吐いてくる。
そして、みんな倒れていった。
Aボタンを押すたびに、「たか君」が死に、「しんちゃん」が死に、「のりちゃん」が死に・・・。
そしてとうとう「けんちゃん」が倒れ、
あと一回、ボタンを押すと、ブレスが「おがわさん」に届くところまできた。
この時、文字送りを無限ウェイトにしてよかった、と心から思った。
だが、あと一回Aを押せば、みんな、死んでしまう。
胸が苦しい。ここまで来た仲間が、みんな、みんな、散ってしまう・・・。
指がリセットに伸びた。
■名無しさん@お腹いっぱい。 05/02/22 23:10:48
当時、ファミコンは高価だった。
あまり裕福でない片親の元に生まれ育った俺は、ファミコンはまさに宝だった。
「リセットをすれば、戦闘前の状態に戻る」
そう、攻略本には書いてあった。
だが押せなかった。
もしリセットを押して、ファミコンが壊れれば、親が悲しむ。
今までの楽しかった冒険が、全て消えうせる。
別に、本物の「おがわさん」が死ぬわけでない。
Aを押せ! 「おがわさん」にブレスを当てて、仮に死んだとしても、また別PTで救助にいけばいい!
そう考えたが、しかし今までの思い出が去来して、俺はボロボロと泣き、
大粒の涙でAボタンをプッシュしてしまうのを恐れ、眼に手を当てて泣き、
リセットボタンに手を伸ばし、
しばらく号泣して、
電源を切った。
■名無しさん@お腹いっぱい。 05/02/22 23:21:48
もうこれ以上、続けたくはなかった。だから電源を切ったのだろう。
「おがわさん」が死ぬところも、攻略本にのっている、みんなの墓の画面も見たくはなかった。
そして、ファミコンも壊したくなかった。
全てを泣きながら考え、思い、そして判断を下した結果だった。
「電源を切って、思い出にさよならしよう・・・」
当時のファミコンのコントローラーに、いまだにその時の涙の跡が残っている。
〜エピローグみたいなもの〜
それから俺は中学生になり、ファミコンからも遠ざかって、陸上部で熱心に汗を流していた。
だが、ある日、友達が、
「これおもろいで〜」
と、ウィズⅢを勧めてきた。
その日、部活を早引けして、もういいのに、窓に鍵をかけ、玄関に鍵を閉め、
思い出のウィズⅠをひっぱりだして、念入りに端子をフーフーして、挿して見た。
あのときの絶望は、時をさかのぼり、
みんな、扉の前で待っていた!!!
「おがわさん」は、もう別の学校へ行ったけど、最後の想いと胸の痛みを込めて、
PTを6回、壁にぶつけた。
*いて!*
〜おしまい〜
■名無しさん@お腹いっぱい。 05/02/22 23:23:57
懐かしい思い出を込めて、気合入れてカキコしました。
またウィズが遊べて嬉しいです。
*ウィズフリークへ愛を込めて*