うそ世界樹の迷宮

  • 人生は素晴らしいが、人生の終わりは死である。これは、いかなる人の望みの究極でもある。
    • スウィンバーン

彼にはひとつの自慢とひとつの悩みがあった。
自慢の方から行こう、「長身でごっつい」事だ。これはパラディンとしては申し分ない。理想である。悩みは「小心者、消極的、引っ込み思案でどちらかというと人付き合いが下手」な事だ。これはパラディンとしては少々いただけない。その巨躯は、彼の心を体現したものではなく、"カミサマ"なんていう得体の知れない存在のいたずらに過ぎなかったのか。
彼は、自分自身を変えたかった。14代(うち3代目と8代目は婿養子に行き平凡な生活を送った。でっち上げである)続いたパラディンの家系は、彼を祝福しなかった。「あれが跡取り?それだったら、うちのかみさんの方がもっといい働きするぜ。*おおっと*バックガードは勘弁だ!(下ネタ」こんなからかいを受けるのはもうゴメンだ。そのために、このエトリアの地へ足を踏み入れたのだ。

「ここがエトリア…静かだな」
1日に数便しかない辻馬車を降り、荷物を抱え降りた彼が、初めて口にした言葉がそれだった。彼は、自分が住んでいた街よりもこじんまりとして田舎臭いな、と思った。建物は流行の作りが見られるが、道路は舗装されていない場所が目立つ。区画整理はほとんどされておらず、考えなしに施設ができていったという感じ。そして、とにかく緑が多い。
それは、これから自分が向かうであろう迷宮が、大樹の形をしていることから見ても明らかだ。町外れにあるという迷宮だが、馬車を降りた町の中心でも、その樹は彼らを見下ろしていた。全てを圧倒する力をひしひしと感じる。冷や汗が、背を伝う。

「…あれ?お前…ジャイン?」
我に返り、自分の名を呼んだ方に目を向けた。こんな辺境で、何故自分の名を知っている者が?
「やっぱり…ジャインだ!お前、まさかここの迷宮に?」
聞き覚えも見覚えもあった。黒のベリーショートに、小さな眼鏡。いつも着ていた、異国の衣装をアレンジしたオーバー。
あの、忌まわしい記憶がふつふつとよみがえる。上靴の蛙と、スープのコオロギの事を!
初等科から中等科までの9年間の地獄を、ものの数秒で思い出した彼―ジャインは、背を伝うものが明らかに増えていくのが分かった。腰から血が一気に引いていく、あの恐怖感。
「あ…あ、キュービィ…?」
あのいじめっ子の、キュービィ

ジャイン…パラディン♂(2)
19歳。
身体はでかいが小心者、力もあるけどまず防御。
幼なじみのキュービィには頭が上がらない。


これ参加してます→世界樹の迷宮トラックバックキャンペーン